国産の食材は環境に良いと言われますが、本当でしょうか。
フードマイレージに輸送手段(船・車両等)ごとのCO₂排出係数を掛けると、産地から食卓までに発生したCO₂排出量が算出でき、環境負荷を示すことに利用されています。
日本のフードマイレージの総量は2016年で約8000憶トン・キロメートルです。2001年の日本のフードマイレージは韓国の1.5倍、イギリスの4倍となっています。(出典:フードマイレージ資料室)
国産食材と外国産食材ではどれだけCO₂排出量が違う?
日本の食料自給率(カロリーベース)は令和3年度で約38%(農林水産省より)で、多くの食材を輸入に頼っています。日本政府は、この食料自給率を2030年までに45%に引き上げることを目標としています。
では、なぜ食料自給率を上げる必要があるのでしょうか。
一般にものの輸入の際には、移動距離が長くなるため、CO₂を多く排出しています。つまり、輸入は地球環境に負荷がかかる行為なのです。この負荷を数値化したもののひとつが「フードマイレージ」です。
牛丼のフードマイレージ
例えば、家族4人で牛丼を食べたとします。牛丼に使った食材が外国産の場合と国産の場合で、フードマイレージはどれくらい違うのでしょうか。
計算過程はこちら
- フードマイレージ=食材の重さ×移動距離
- 牛肉は500g、玉ねぎは200gとする
- 移動距離は次のように仮定する
アメリカ:約18,000km(テキサス州→ニューオーリンズ港→東京)
中国:約2,000km(山東省→東京)
北海道:約1400km(北海道北見市→東京)
外国産
500(g) × 18,000(km) + 200(g) × 2000(km) = 9.4(t・km)
国産
(500(g) + 200(g) )× 1400(km) = 1.0(t・km)
※小数第2位を四捨五入
さらに、フードマイレージに、食材を輸送した交通機関のCO₂排出係数をかけると、生産から販売までに発生したCO₂排出量が算出できます。
計算過程はこちら
テキサス州からニューオーリンズ港(1,100㎞)、北海道北見市から東京(1,420㎞)はトラック輸送、ニューオーリンズ港から東京(17,000㎞)、山東省から東京(2,000km)までは船で輸送と仮定
〈国交省HP輸送量当たりの二酸化炭素の排出量(貨物)(2020年度)より〉
- 船のCO₂排出係数:43g – CO₂/t・km
- トラックのCO₂排出係数:216 g-CO₂/t・km
アメリカ産牛肉
500(g)×17,000(km)×43+1100(㎞)×216 = 484.3(g-CO₂)
中国産玉ねぎ
200(g)×2,000(㎞)×43 = 17.2(g-CO₂)
合計:484.3+17.2 = 501.5(g-CO₂)
国産
700(g)×1,400(㎞)×216 = 211.7(g-CO₂)
外国産の食材を使った牛丼と、国産の食材を使った牛丼で、約290g-CO₂の差があります。これはTVを1日半付け続けていた場合のCO₂発生量と同じ程度です。
今回は外国産と国産の牛丼でフードマイレージを計算しましたが、食材が異なれば結果も変わります。他の食材のフードマイレージを算定しているところもありますので、気になる方はぜひ調べてみてください。
参考:2022年 朝日新聞デジタル「フードマイレージとは?世界との比較や日本の課題を徹底解説!」
まとめ
外国産の食材を使った牛丼と国産の食材を使った牛丼のフードマイレージから、CO₂排出量を計算すると、外国産の方が約286g-CO₂多くなります。
これから買おうとしている食材はどこの産地の食材なのか、フードマイレージを意識して食材を選んでみましょう。
RECIPE×SDGs
フードマイレージで測れないもの
フードマイレージは、食材の重さに輸送距離を掛けた数値で、この指標を用いてCO₂発生量を算出することができます。しかし、これは指標のひとつであり、フードマイレージだけでは測れない事柄もあります。
安定的な食材の確保
食材の確保は私たちの生活の存続に関わるため、国内で生産が難しい食材はフードマイレージが大きくても遠くから輸入せざるを得ない場合があります。一方で、輸出国の政情不安などによって、突然輸入できなくなるリスクもあります。
飢餓
私たちが食べている牛や豚のエサはどこからくるでしょうか?世界で生産されている穀物の3分の1が家畜のエサ用であると言われています。フードマイレージの小さい国産の肉を食べていても、エサの輸入が飢餓や温暖化を招いているかもしれません。
生産工程のCO₂発生量
生産の工程で、たくさんのCO₂が発生する食材があります。例えば牛肉は、国内で作られフードマイレージの数値が小さくても、穀物や野菜に比べてCO₂発生量が多くなってしまいます。
関連レシピ:サスティナブルな食事って何だろう?
自由コメント
レシピを読んであなたが思ったことや気になることをぜひ教えてください。